仕事を辞めて旅に出る20代 ― 不安を超えて見える新しい景色

キャリアコラム

20代というのは、社会に出てまだ数年、仕事にも慣れ始めて少し余裕が出てくる一方で、「このままでいいのだろうか」という疑問が心に浮かぶ時期でもあります。毎日の仕事に追われてふと立ち止まったとき、無性に「全部やめてどこか遠くへ行きたい」と思ったことのある人は少なくないのではないでしょうか。実際にその思いを行動に移し、仕事を辞めて旅に出る20代もいます。

一般的には「キャリアの空白になる」「就職に不利になる」といったネガティブな側面ばかりが語られがちです。ですが、必ずしもそれがすべてではありません。むしろ、20代で旅に出ることが、その後の人生に深い意味を与えることもあります。

 

20代で旅に出たくなる理由

社会に出て数年が経つと、仕事の流れや職場の人間関係に慣れる反面、自分の将来について考える余裕も出てきます。周囲の友人が転職したり結婚したりする姿を見て、「このままでいいのだろうか」と心がざわつくこともあるでしょう。

20代で旅に出たいと考える背景には、いくつかの共通点があります。

  • 価値観を広げたい 
  • 同じ毎日から抜け出して新しい刺激を得たい 
  • 会社に縛られずに自由な時間を過ごしたい 
  • 一度リセットして自分のやりたいことを探したい 

どれも身勝手ではなく、自然な感情です。むしろ20代という若さだからこそ、その衝動に従って行動できる力が残されているとも言えるでしょう。

 

「辞めて旅に出る」という選択への不安

一方で、実際に決断しようとすると、多くの人が足を止めます。「再就職できるのだろうか」「周囲から無責任と思われないか」「お金はどうするのか」。不安は尽きません。

確かにリスクはあります。収入が一時的に途絶えますし、帰国後にすぐ仕事が見つかる保証もありません。履歴書に空白期間ができるのも事実です。

しかし、ここで大事なのは「不安を力に変えられるかどうか」です。何も準備せずに飛び出すのではなく、最低限の資金を用意したり、旅の目的を自分なりに整理しておいたりすることで、その後の展開は大きく変わります。

 

旅で得られるもの

20代で旅に出ることの最大の意義は、経験を通じて自分自身を知ることです。

① 自分で決める力

旅先では予定通りにいかないことばかりです。電車が遅れたり、宿が見つからなかったり、言葉が通じず困ったり。そんなときに「どうするか」を自分で決める習慣が身につきます。この力は社会に戻ったときにも必ず役立ちます。

② 人との出会い

旅の途中で出会う人との関わりは、会社の枠を超えたつながりを生みます。異なる国籍や価値観を持つ人と話すことで、自分の考えが揺さぶられ、視野が広がります。

③ 一歩引いた視点

日常から離れると、当たり前だと思っていたことを客観的に見られるようになります。仕事に対しても「やっぱりこの道でいい」と確信する人もいれば、「別の生き方もある」と気づく人もいます。旅は答えを与えてくれるのではなく、答えを考える時間をくれるのです。

 

旅の途中で訪れる気持ちの変化

実際に旅に出た人たちは、最初から前向きな気持ちでいられるわけではありません。見知らぬ国で飛行機を降りた瞬間、言葉が通じずに戸惑ったり、計画通りにいかず落ち込んだりすることもあります。ところが、不思議なことに数週間も経つと、その困難を「自分で解決できる」という小さな自信に変えていくのです。

例えば、電車の切符が買えなくて困っていたときに、現地の人に助けてもらい、片言でも感謝の言葉を伝えられたとき。たったそれだけでも「通じた」「なんとかなる」という感覚が芽生えます。この積み重ねが、人を強くしていきます。

 

20代だからこそできる挑戦

「もし失敗したらどうしよう」と考える人もいるでしょう。しかし、20代は社会人としてのキャリアの中でもっとも柔軟にやり直せる時期です。30代や40代になってから同じことをしようとすれば、家族や仕事の責任が増えて難しくなることが多いのです。

20代での旅は、後から振り返れば「挑戦できる環境にあったからこそ踏み出せた」と実感できるものです。就職活動でも「若いうちに挑戦しておきたかった」と素直に語れば、その行動力を評価する企業も少なくありません。

 

経験をどう説明するか

旅そのものは大きな価値ですが、就職活動では「その経験をどう説明するか」が大事です。単に「いろいろな国を見てきました」と言うだけでは弱く映ります。

  • 「異なる文化で働くことで、初対面の人と信頼関係を築く力が身についた」 
  • 「予想外のトラブルを限られた資金の中で解決する経験を通して計画力が強化された」 
  • 「一人で行動する中で、自分の得意不得意をはっきりと理解できた」 

このように、自分なりの言葉で伝えることができれば、旅は「空白」ではなく「挑戦」として採用担当者の心に残ります。

 

人生の選択肢を広げる旅

旅に出ることは、キャリアを諦めることではありません。むしろ「人生の選択肢を増やす行動」として捉えることができます。海外で出会った働き方や暮らし方に触れることで、「必ずしも一つの会社に縛られる必要はない」と気づく人もいます。

そうした気づきは、帰国後の転職や働き方の選択に活かされます。正社員として安定を選ぶ人もいれば、フリーランスや海外を拠点とする働き方にシフトする人もいます。大切なのは「選べる自分になること」です。旅を通じて、その土台が築かれていきます。

 

ネガティブからポジティブへ

「仕事を辞めて旅に出る」と聞くと、多くの人は無謀だと感じるかもしれません。けれども、20代はまだやり直しのきく時期です。失敗しても立ち上がれるし、方向転換もできます。

大切なのは「辞めたこと」ではなく「その後に何を得たか」です。旅で得た経験をどう言葉にして、どう次につなげるか。それを考えること自体が、成長の証でもあります。

 

まとめ

20代で仕事を辞めて旅に出ることは、不安もリスクも伴います。しかし、それを乗り越えて得られる経験は一生の財産になります。

  • 旅での困難は自己成長の糧になる 
  • 20代は挑戦できる数少ない時期である 
  • 経験を言葉に変えることで就職活動でも強みになる 

「辞める」ことに目を向けるのではなく、「そこから何を得るか」に目を向けてみてください。その先に見える景色は、思っている以上に明るいものになるはずです。

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